2015/4/15 「私の漆器」作文コンクール大賞、審査員特別賞、受賞作品発表
この度、「私の漆器」作文コンクールで大賞と審査員特別賞を受賞した二作品について全文を弊社サイト上で公開することにしました。ご応募いただいた原文のままで掲載いたします。皆様ぜひ受賞者のあつい「漆」、「漆器」への思いをお読みいただけたらと思います。
大賞「母に寄り添い漆器に寄せる思い」 新年会には出かけようと思い、着物を用意している時、義母が、いてくれたらなあと、つくづく感じる。義母が、お茶を教えている時には、初釜やお茶事で新年は、にぎやかでした。嫁いで来た時、漆器の扱い方を一つ一つ教えていただいた。心をこめて作られたものだから、心をこめ、ていねいに扱うことは、もちらん、色々な願いが、込められた器であること。手には、やさしさを込めて扱っていると手になじむことも教えていただいた。そんな義母が認知症を発症してしまった。何が、義母にとって大切であるか、ずいぶん悩んだ結果、入退院、手術を経て、施設で、ケアーしていただくことにした。
施設では、とても介護士さんが、よくしてくださり、食事の用意も見れ、おいしい香りもする。しかし、食器は無味乾燥な物でした。やはり、プラスチックで絵柄はないものでした。家で使っている食器とは、かけ離れている物でした。
リハビリ用のものは、すくいやすい軽いもの、持ちやすいものでなければなりませんが、漆器は、ぴったりだと思う。両手つきのお湯のみ、お椀、コーヒーカップが、自然の素材でつくられていれば、絵柄が、ついていれば、どんなに喜ばれるだろう。食事が、楽しめるようなものを施設でも使ってもらえることを願っている。
また、私が、義母の所に持ち込めるようにお菓子の小箱が、一つの絵になる、また、その一つ一つに違う絵がついていて、貝合わせのような、脳に刺激が入る、目から、楽しめる漆器が、あれば、さぞかし、義母との話がはずんで長生きしてくれるのでは、ないかと思った新年でした。願いが、かないます一年でありますよう。漆器には、不思議な力があるように思えてならない。
岡山県 N・M 女性
審査員特別章「私と漆器」 私は漆器に全く興味が無かった。とは言っても家の食器が全部洋食器である上、おせち料理を食べる習慣もないのでお重すらあまり見たことがなかった。すなわち興味がなかったというよりは見たり触れたりする機会が無かったのだ。
そんな生活をしていきて十五年、中学三年生になり学校行事の班別研修でのテーマが漆と漆器になった。日本刀や京野菜などいくつか候補があった中で、他の班と被っていなかった漆をそれとなくと言っては失礼だが選んだ。しかし、各自で個人テーマを学習しているときに驚いた。漆器は奥が深く不思議と知れば知るほど引き込まれた。
そして研修当日、石川さんに工房でお話を伺っていた際に漆を塗る時の行程を表した一枚の板を見せていただき加えて石川さんはこうおっしゃった。
「こんなに工程を重ねなくていい。でもお客さんを騙したくないから正直に塗るんだ。」と。
私は利益よりもお客さんを重んじて作業するだという職人さんのひたむきで純粋な心得に感動した。心のこもった情熱あふれる職人さんの心こそが漆器なのだなとも思った。そして石川さんはさらに絵を付けてある漆器を見せて下さった。黒地に金色の柳の木が描いてある美しいお重箱だった。まるで自分が柳の木をその場で見ているような躍動感と引き込まれそうなほどの奥行きを一目で感じられるくらい臨場感あふれる作品であった。これを見て漆器をテーマに選んでよかったと強く思った。
漆器をせっかく学んだのにただの「研修テーマ」にしておくのはもったいないので、まずは家族へ漆器の魅力を発信して、お金をためて両親にプレゼントしてあげたい。
漆器が私の家族とのつながりにいつかなって欲しい。
茨城県 M・R 女性
|